Dr.タナカの豆知識
入れ歯の取り扱い
今月は入れ歯の取り扱い(特に往診現場で)にまつわる話。
毎度のことですが、治療方針等には、様々な考え方があります。
このコラムは私、田中隆博の独断と偏見に基づいた「放言」でございます。
そのあたり、あたたかく見守っていただければ幸いです。
昔、入れ歯にネームを入れていました。
透明なフィルムに患者さんの名前を印字して、入れ歯本体に埋め込むのです。
「そうすれば、入れ歯の取り違えが減る」
そう考えたのです。現実は結構難しいです。
相当、かなり、大きな字で書いて埋め込まないと、
使っているオジさん、オバさんが、読めない。
入れ歯が汚れていたら、まず読めない。
20年近く前になりますが、私が往診していた特養施設こんなことがありました。
あるオバさんの入れ歯を作成しました。フィット感もバッチリで、若い頃の私にとっても会心の作品でした。
患者さんであるオバちゃんも
「調子がええ、これで何でも食べられそうだ」
と大変喜んでくれました。
ところが、数日経って、施設の職員さんから電話が入り
「数日前から、〇木さん(オバちゃんのこと)の入れ歯が落ちてくる。何度試してもガタガタで吸い付かない。」
急いで施設に行って事情を聞くと
「バッチリだったのは診療当日だけで、その翌日からブカブカになって落ちてくるので、ご飯が食べられない。」とのこと。
おそるおそる、オバさんの口の中を覗き込むと....
入れ歯がガタガタになっていました。信じられない思いで、入れ歯を手に取って凝視.....
これは、〇木さんの入れ歯ではない!! これは〇本さん(男性)の入れ歯だ!!
部屋を出て、急いで〇本さんのところへ。
〇本さん、大いびきをかいてお昼寝中。 入れ歯が小さすぎ。
この入れ歯で数日間飯を喰っていたのか???
「〇本さん、こんにちは、歯医者の田中です。入れ歯の調子はどうですか?」
〇本さん
「調子がええ、何でも食べられる~」
このオジさん、器用な人だなぁ(苦笑)