Dr.タナカの豆知識
続・白い歯とは…(後編)
人と人との出会いはタイミングといいますが、私にとってはまさに最高のタイミングで彼と出会えたと感じています。
今では当然知っていることですが、当時の私にとっては白い差し歯に紫色や茶色を織り交ぜる彼の技法はとても新鮮でした。患者さんの口の中で使う接着剤の色についても沢山の「カンどころ」を話し合いました。
技工に当たって彼はいろんな情報を欲しがりました。
患者さんの性別、骨格、目付き、鼻のカタチetc…それもまた面白かった。(歯の切削に関しては医療的な見地から無理な場合もあるのですが)
技工士さんの立場から「ここはもうちょっと削って欲しい」とかいう希望も缶ビール片手の時間に汲み取る事が出来ました。
私が故郷の大阪に戻って開業することになって、分院長の最終診療日には、彼の奥さんが花束を持って来てくれました。その後、大阪に戻ってからもセラミックの技工物があれば、彼の技工所に依頼していました。
白い歯の中に雲が浮いた様な模様や、極細の黒いライン。これがあるのとないのとでは、ナチュラルさが全然違うんですね。勿論、ホワイトニング後の白い歯にはそんな色調は使いませんが…
残念ながら、彼とのコラボ製作は今後二度と、ありません。
去年の秋に彼は急逝してしまいました。62歳でした。
亡くなる二週間前も電話で色調の会話をしていたものですから、
こうやってコラムを書いている今でも、信じられません。
「大竹茂先生。
貴方から本当に沢山の事を学びました。
貴方の肉体は無くなりましたが、貴方の情熱は今も私の心の中に生きています。
気付けば今年私も45歳。ちょうど出会った頃の貴方の年齢になります。貴方に負けない情熱を持って仕事に取り組みます。 合掌。」